B-CLUB(模型誌) 1985年3号

【Zガンダム
 新たなるスタート
 その名は『ZZ(ダブルゼータ)』(仮称)】

富野由悠季監督インタビュー

*欄外に
『この富野総監督インタビューは、昭和60年11月20日に行われたものです。
 それ以降、名称等に変更があった場合は御容赦ください』
 との記述がある。

さし絵カット1
さし絵カット2
さし絵カット3




・Zガンダムは失敗作…?
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BC(B-CLUB):
まず「Zガンダム」終了を目前としてのお気持ちをうかがいたいのですが。

富野:
結果としてZ・Gは「その後のガンダム」という事にこだわったために
変に大人の話になってしまった。
僕自身の好みとしてはかなり満足してる部分もあるんだけど、
見せられている視聴者には今一つ受け入れられなかった訳です。
やはりTVというのは本来そう言ったことがあってはいけないんです。
結局一年かけて旧ガンダムの澱をおとすことしか出来なかったんですから。
語れたのはカミーユの物語であって、「ガンダム世界」を語るには到底至らなかった。
ここでガンダムが終わるのは悔しいんですよね。
ここでもう一度前のガンダムに戻らなければ! と、思っていましたから。
だからバンダイから「延長は可能であるか」と打診があった時、
即答で「可能です」と答えていたんです。

BC:
かつてのヒーロー達が年齢を重ねて登場する
パートII物というのは今までなかったわけですが?

富野:
実はそういう作品というのは面白そうにみえて全然そんなことはない。
だから僕が言ってはいけないんだけど、Z・Gは、こういった形でのパートII物における
大失敗作イベントであったともいえるでしょう。
それが良いことでは勿論ないです。
ただやっぱり僕としては一度やりたかった事をやらせてもらって感謝しています。
どうしたら面白くなるんだろうと途中何度も考えたけど、
要するにフィールドを間違えた、という事実はどうしても脱出できない。
TVを娯楽作品として考えたとき、一番やってはいけないことだったんでしょう。
よくもまあ、打ち切りにもならないで(笑)



・目指すは明るいガンダム!
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BC:
延長は具体的にはどういった形でなされるんですか?

富野:
まだ正式決定は出てないんだけど、
一応タイトルは「ZZ(ダブルゼータ)」でいきたい、と思っているんです。
このタイトルが言いえて妙で、継続なのか? と言われると
Zは出てくるけどカミーユも、シャアも出てこない。
じゃあ、なんなんだ? といわれると「うん、新作ぽいね」。
それが正に「ZZ(ダブルゼータ)」です。
まず、そこで何をやっていきたいか、というとつまり「ガンダム」は
さっきも言ったようにとても一年で収まる話じゃなかった。
だからこの一年は所詮、カミーユならカミーユの物語になってしまった訳です。
それでは「ガンダム」という大きなテーマに対して、
カミーユではない視点から見ていきたい。
また、「ガンダム」のなかにある考えかた「ニュータイプ」についても、
もっと分かりやすい形でやっていきたい。

BC:
では延長といってもかなり印象は変わる訳ですね?

富野:
現在6話ぐらいまでのシナリオ作業がスタートしているんですが、
シナリオライターはとても喜んでいます。
それはどうしてかといえば、Z・Gという旧作を引き継いではいるんだけど、
新作になっているし、巨大ロボットアニメってこういうものじゃない?
といえる作品になっているからです。
本当はもっと軽くしてしまいたい位。
だからZ・Gよりも一般市場へのアピール度は増しています。
そして、こういう描きかたであるのなら、「ガンダム世界」はあと十年くらい作れます。
巨大ロボット物であるということのためには、
例えば「マジンガーZ」などにあったユーモアも
作品に組み込まなきゃいけないんじゃないか、というのが今回の制作趣旨です。

だから今、スタッフの間ではこういっているんです。
「明るいガンダム、愉快なガンダム、みんなのガンダム」
つまり、そういう風にしていきたい。
ただ厳然としてモビルスーツな訳ですから、「ダブルゼータァ!」と呼んだら、
ガンダムが飛んでくる、という訳にはいきません(笑)。
ただそういう精神構造でいきたい。
正直にいって今僕はこの作業が楽しくてしかたないんです。
だから並行してZ・Gの最終回をやっていると、
うっとおしくてしかたないんです。(笑)
こんな重い物を五時半のTV番組でやっちゃいけない!
とか思ってしまいますね(爆笑)

BC:
富野監督の以前の作品でいえば「無敵超人ザンボット3」や
「無敵鋼人ダイターン3」のような感じですか。

富野:
「ダイターン」程は無理としても「ザンボット」「ザブングル」みたいにはしたい。
またそうしないと、シンタとクムみたいなキャラクターも生きてこないんです。
Z・Gの中ではあの二人は嘘になっちゃう。
だから今回は、ファを始めとするアーガマのクルーが
二人に引っ張り回されると思います。
ブライトは「アーガマのお父さん」といった感じで。
恐らくZ・Gだけが好きだった人は首を傾げる作品でしょう。
しかし一般視聴者が「巨大ロボット物」ということで抵抗なしに見れるのなら、
「ZZ(ダブルゼータ)」は「ガンダム」にとって
まさにターニングポイントとなりえます。
そういう意味で僕は仕事師でありたい、とおもっていますから。

BC:
ではパターンの、「Zガンダム、マークIIのピンチの時、
さっそうとダブルゼータが登場!」なんてシーンもありうるんですか?

富野:
(笑)それに近いことはありえます。
そういうシーンが見たくない奴は見るな、と。
今になって考えてみると、「ガンダム」以後幾つか出て成功しなかった
様々なオリジナル企画の問題点がZ・Gで見事に証明されたんじゃないですか?
作り手が作りたいものを、無理矢理視聴者に見せていた、というような。
だから今正にTVアニメとしてのロボット物を作って見せてあげるのも
「ガンダム」の仕事じゃないか、
そう考えているとZ・Gの一年はまったく無駄ではなかったんです。



・キャラクター・デザイン 北爪宏幸
・メカニカル・デザイン 永野護
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BC:
キャラクターデザインは引き続き安彦さんですか?

富野:
旧キャラクターも出てきますから、その分に関してはそうですが、
今回から新しく登場するキャラクターは、
現在作画監督として参加してもらっている北爪宏幸くんにお願いしています。
主人公はジュドー・アーシタ。年齢は13歳と、ぐっと下げました。
また旧キャラクターで活躍するのはブライトだけで、シャアはしばらく姿を見せません。
それはどういう事かといえば、単純に奴は敵にした方が格好よさそうだから。
そのため冷却期間をおいて登場する筈です。

BC:
メカデザインはどなたに?

富野:
永野くんに任せようかと、考えています。
ただ今回のZZといわれるガンダムはそうはいいながら、
いわゆる永野メカではありません。
大河原マシンに近い線があります。
それは彼が従来のデザインと、大河原的デザインの二種を意識して
それぞれをデザインしているということなんです。
いつまでもハンブラビのようなデザインだけをしていては
生き残れないという事を知ったんでしょう。
だからこれからの彼のメカのバリエーションには期待できます。
今描かせている一話ヤラレメカに近いメカなどは
かつての手塚治虫をほうふつさせる、漫画的なものまであります。
それに加えてオーソドックスなデザインもすることで、
彼のフィールドは良い方向に、一気に広がるかもしれません。
また、手塚漫画である「鉄腕アトム」からスタートした僕にとって原点に戻る、
という感じも若干あります。



・今、メカデザイナーに課せられるもの
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BC:
Z・Gでは複数のデザイナーによる
メカデザインという方式をとられたわけですが、
それは成功したんでしょうか?

富野:
無論Z・Gにおける多様なMSをみればある成果があがったことは確かです。
ただその反面、個人のデザイナーがでてこなかったという問題がありました。
本来なら個人のデザイナーを生みだす為の、複数デザイナーだったんですが。
なぜそうなってしまったか、といえば競作させたことで全体が教室化してしまったんです。
教室では余程優等生でないと、他を抜きん出て、一番になれないんです。
だから互いに刺激しあっても、それが結果的に他人のコピーになってしまったり…。
そこで感じたのは、デザイナーのインテリジェンスの薄さです。

ここで言うインテリジェンスとは知識、情報、
それらを操作する能力すべてをふくんでいるんですが、それが薄かった。
だから今後、この世界に入ってこようという人達にお願いしたい。
とにかく、自分個人としてのインテリジェンスを
大学までの間の自分なりの勉強で高めて欲しい。
例えば工業デザインでもいいし、建築でもいい、
場合によっては油絵を描くということだけでもいいから、
まずそう言ったデザインの一分野を徹底的に学んで、
その上でアニメならアニメの世界にくる。
それぐらいの教養、深さがこれからは要求されることになります。

現在、あれだけの数のデザイナーがいるんです。
その中では、余程個性がないと、仕事として使えません。
素人のカラオケチャンピオン程度の腕、個性では業務になりません。
だからまず、基礎学力とそれをコントロールできるだけの
インテリジェンスを身につけてほしい。
メカデザイナーというのは、そういう能力を要求される職業になってしまったんです。
Z・Gでああいった方式を採ったことで、そうしたことがはっきりと見えてきました。
モデラーの世界もそうじゃありませんか?

BC:
確かにモデラーの世界も名人芸みたいになってきて、
大学で彫塑をやっていた人間でないとつとまらないぐらい、
個人の能力、個性が重視されています。

富野:
外のジャンルと同じようにインテリジェンスが要求されるようになってきた、
ということでしょう。
一概にそれを「レベルがあがってきた」ということはできないけれど。
技術的にも、応用がきき、使い分けができなければいけない。
そのためには最低限のデッサン力はなくちゃならない。
モデラーの場合、加えて素材に対してのセンスは
本能的に持っているくらいの才能が必要でしょうしね。
またこれからのデザインワークには立体物となったときのものが
平面で見えてこなければいけない。
単純にいえば、正面のみのデザインを描くときに、
すでに三面図が頭の中になければいけない。
だからそういう原典となる物をプロのデザイナーは
常に提示していかなければいけないわけで、
プロもそういうことをちゃんと認識して欲しいですね。

もう高校生レベル、遊びのレベルでやれた時代は確実にここで終わりました。
またそれに対応していけるセンスをもった演出家がサンライズの中にもいないわけで、
演出志望の人にも自分独自のインテリジェンスの仕込みは絶対に必要です。
例えば僕の場合、どうしてこんなにも長くロボットアニメの監督をやっているか、
ということが不思議だったんだけど、それはやはり中学、高校のころ大量に読んだ
ロケット関係の資料がはぐくんでくれたセンスのおかげだと思うんです。
この間そんな資料の山を見つけて自分でも驚いたんです。
ただそんなのばかり読んでいたので成績は奮いませんでしたが(笑)。
だから僕にとって宇宙はずっと無縁じゃなかったんです。

デザイナーや演出家を志望する若い人達も長い時間をかけて
自分なりのセンス、インテリジェンスを身につけて、
それからプロの世界にきてほしい。
今はそれだけのものが確実に必要とされています。


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